ビジネス訪問
1 アポとり電話で好印象を
暮らしのルールが浸透(しんとう)していた江戸(えど)時代。不意の訪問は「時泥棒」といって嫌われた。得意先などの訪問は約束を取るための電話から始まる。電話口で「こいつ感じがいいな」「会ってみたいものだ」などと思われたら、その訪問は三分の一くらい成功だ。普段から感じのよい電話の掛け方や話し方を勉強しておこう。
電話は顔が見えないので声に表情を載せて話そう。ラジオのアナウンサーはテレビのアナウンサーと違って表情豊かに、身ぶり手ぶりを交(まじ)えて話している。その方が声に表情が出るからだという。電話の前でお辞儀をしている人を笑う人もいる。だが電話だからこそ表情や動作をつけて話すと声に気持ちがこもる。
いい声を出すコツは口角(こうかく)を上げて話すこと。ギターやバイオリンは弦(つる|げん)だけでは良い音は出ない。空洞(くうどう)響(ひび)かせて良い音が出る。人間の声も声帯(せいたい)から出た声を口の奥、鼻の奥に響かせると一番良い声が出る。そのためには口角を上げて話すことがポイントなのだ。
アポの電話は表情豊かに口角を上げてニコニコ、ハキハキと相手を思いやって話すようにしよう。
2 約束前日に確認電話を
訪問は通常(つうじょう)、電話で約束を取ることから始まる。電話に相手が出たら、まず名乗りあいさつをして、用件を伝える。例を示すと「実は**の件でお会いしてお話をうかがえましたらと存じまして、お電話いたしました。三十分ほどご都合のよい日にお時間をちょうだいできませんでしょうか」といった具合だ。
日時(にちじ)は相手に決めてもらう。相手の言った日が都合が悪ければ「申し訳ありませんが、その日は前約が入っております。恐縮(きょうしゅく)ですが、別の日でご都合の良い日はございませんでしょうか」とお願いする。
急ぎの用件などで時間を指定したいときは「勝手申しまして大変恐縮ですが、*月*日の午後*時に三十分ほどお時間をいただけませんでしょうか」と頭を下げる気持ちでお願いする。
日程が決まったら電話口で日にちと曜日、時間の復唱(ふくしょう)確認を忘れずに。念のため訪問前日にもう一度電話を入れる。直接相手を呼び出す必要はない。電話に出た方に会社名と名前を名乗り「明日、*時に**様にお約束いただいております。よろしくお伝えください」と言っておけばよい。
3 5分前には訪問先の受付へ
約束の時間に遅れることは信用を失うもとだ。ビジネスタイムは五分前行動。訪問先の受付は遅くとも五分前に済ませる。訪問先への交通機関や所要(しょよう)時間は事前(じぜん)にしっかり調べておく。
遅刻は厳禁(げんきん)だが、交通機関の遅れなどやむを得ず遅れるきは、約束の時間が過ぎる前に必ず連絡する。そのとき到着時間は余裕(よゆう)を持って伝える。十分間くらい遅れそうなときには「二十分ほど遅れます」と言う。十分と言いながら、十五分遅れて到着したのではダブルで遅刻したことになる。
受付に行く前に手袋やマフラーはもちろんコートも脱ぐ。欧米では訪問時にコートを脱ぐことは部屋で長居(ながい)をする意思表示だが、日本ではそこまで気にしなくて良い。コートは防寒(ぼうかん)とほこりよけで着ていくもの。建物内ではほこりを落とさないように配慮し、裏返しに畳むことが望ましい。
初めて訪問するときは、その企業のホームページなどをみて、企業理念(りねん)ゃ取扱商品、売り上げなどを調べておく。相手を知っておくことは最低限(さいていげん)の礼儀だし、下準備(したじゅんび)をすれば、やる気のある人だと好感を持ってもらいやすくなる。
(マナーデザイナー 岩下宣子)
