近代の夜明けは、ヨーロッパにおける「都市の発達」に始まる。ローマ帝国崩壊後の1000年にわたる中世ヨーロッパの暗黒を切り開いたのは、中世後期の商業都市の発達であった。そして、それは14~15世紀のイタリアを中心にしていた。イタリア商人達は、アラビア商人達から東アジア(インド、中国)の特産物(絹、陶磁器、香辛料)を買い付け、それを広くヨーロッパ全域や北アフリカ諸国に売ることによって、巨万の富を蓄積した。これに支えられて花開いたのが「イタリアルネッサンス」である。15~16世紀のイタリアにはその後の人類史に大きな足跡を残す偉大な芸術家、科学者が多数現れた。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツアーノ、ガリレオ…・・それらはきら星のごとく人類史を飾る天才達であった。イタリアの繁栄を、当然のごとくヨーロッパの他の国々は羨望の眼差しで見つめた。イタリアの繁栄を自国の繁栄にできれば…・ヨーロッパ諸国の君主、貴族階級のみならず、庶民層までがそれを渇望したのである。しかし、そのためには東アジアの富を手に入れなければならない。イタリア人、アラビア人の手を通さずにそれらを手に入れることができれば、それが実現できることは誰もが知っていた。だが、誰もそれができるとは思っていなかった。東アジアへの道は閉ざされていたのである。その閉ざされた道をこじ開けたのが、ポルトガルであり、スペインであった。ポルトガル王ジョアン2世の熱情がついにアフリカ大陸を周回しインドへの道を切り開き、1498年、バスコ・ダ・ガマはインドへ到着した。ポルトガルの冒険に刺激されたスペイン王イザベル1世は、貧乏で無名のイタリア人船乗りコロンブスの野心と奇想天外な発想…・・地球が丸いという…・にかけた。1492年8月3日スペインのバロス港を出発したコロンブス率いる3隻の船団こそが近代社会の幕開けを告げたのである。
2ヶ月と少しの航海のすえにたどり着いた大陸、アメリカ大陸こそヨーロッパ社会に巨万の富を生み出す源泉となったのである。スペインはアメリカ大陸でタバコ、サトウキビを栽培し、銀山を掘った。そこで働かされたのがインディオであった。しかし、インディオの酷使とヨーロッパから持ち込まれた伝染病によって、インディオ人口が急減すると、スペインはその代替労働力としてアフリカ黒人を奴隷としてアメリカ大陸に運んだ。
悪名高き「奴隷貿易」である。15世紀から19世紀までの400年にわたって続けられた奴隷貿易によって、アフリカは決定的な打撃を受け21世紀の今日まで立ち上がることができなくなった。それに対してヨーロッパの国々は大西洋を挟んだアメリカ、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ「三角貿易」(奴隷貿易)によって巨万の富を蓄積していったのである。
アメリカ大陸からの特産品売買、アフリカ大陸からの奴隷売買、そして、アメリカ大陸で量産された銀はアジア貿易での貿易通貨として、アジアの特産品貿易においてもヨーロッパに富を蓄積させたのである。15世紀から19世紀のヨーロッパの世界貿易における成功はヨーロッパ社会にも大きな変革をもたらした。商人層の力が増大したことである。そのことは、それまでのヨーロッパ社会の身分制度を基本とする封建制社会を根底から揺るがした。それがキリスト教における「宗教改革」であり、18世紀に始まる「市民革命」である。これらの革命によってヨーロッパ社会の中核として台頭した市民層(商人、資本家)は、蓄積した富を産業の発展に投資した。その結果、ヨーロッパにおいて新たなる産業、工業の大発展が始まったのである。
