竹取物语

2007-08-05 来源:网络  【 评论:0 收藏
5 火鼠の裘  
右大臣阿倍御主人は财たから丰に家广き人にぞおはしける。その年わたりける唐土船の王卿わうけいといふものゝ许に、文を书きて、「火鼠の裘といふなるもの买ひておこせよ。」とて、仕うまつる人の中に心たしかなるを选びて、小野房守といふ人をつけてつかはす。もていたりて、かの浦に居をる王卿に金をとらす。王卿文をひろげて见て、返事かく。「火鼠の裘我国になきものなり。おとには闻けどもいまだ见ぬものなり。世にあるものならば、この国にももてまうで来なまし。いと难きあきなひなり。しかれどももし天竺にたまさかにもて渡りなば、もし长者のあたりにとぶらひ求めんに、なきものならば、使に添へて金返し奉らん。」といへり。かの唐土船来けり。小野房守まうで来てまうのぼるといふことを闻きて、あゆみとうする马をもちて走らせ迎へさせ给ふ时に、马に乘りて、筑紫よりたゞ七日なぬかに上りまうできたり。文を见るにいはく、「火鼠の裘辛うじて、人を出して求めて奉る。今の世にも昔の世にも、この皮は容易たやすくなきものなりけり。昔かしこき天竺のひじり、この国にもて渡りて侍りける、西の山寺にありと闻き及びて、公に申して、辛うじて买ひとりて奉る。价の金少しと、国司使に申しゝかば、王卿が物加へて买ひたり。今金五十两たまはるべし。船の归らんにつけてたび送れ。もし金赐はぬものならば、裘の质かへしたべ。」といへることを见て、「何おほす。今金少しのことにこそあンなれ。必ず送るべき物にこそあンなれ。嬉しくしておこせたるかな。」とて、唐土の方に向ひて伏し拜み给ふ。この裘入れたる箱を见れば、种々のうるはしき瑠璃をいろへて作れり。裘を见れば绀青こんじやうの色なり。毛の末には金の光辉きたり。げに寳と见え、うるはしきこと比ぶべきものなし。火に烧けぬことよりも、清けうらなることならびなし。「むべかぐや姫のこのもしがり给ふにこそありけれ。」との给ひて、「あなかしこ。」とて、箱に入れ给ひて、物の枝につけて、御身の假粧けさういといたくして、やがてとまりなんものぞとおぼして、歌よみ加へて持ちていましたり。その歌は、
かぎりなきおもひに烧けぬかはごろも袂かわきて今日こそはきめ
家の门かどにもて至りて立てり。竹取いで来てとり入れて、かぐや姫に见す。かぐや姫かの裘を见ていはく、「うるはしき皮なンめり。わきてまことの皮ならんとも知らず。」竹取答へていはく、「とまれかくまれまづ请じ入れ奉らん。世の中に见えぬ裘のさまなれば、是をまことゝ思ひ给ひね。人ないたくわびさせ给ひそ。」といひて、呼びすゑたてまつれり。かく呼びすゑて、「この度は必ずあはん。」と、妪の心にも思ひをり。この翁は、かぐや姫のやもめなるを叹かしければ、「よき人にあはせん。」と思ひはかれども、切に「否。」といふことなれば、えしひぬはことわりなり。かぐや姫翁にいはく、「この裘は火に烧かんに、烧けずはこそ实ならめと思ひて、人のいふことにもまけめ。『世になきものなれば、それを实と疑なく思はん。』との给ひて、なほこれを烧きて见ん。」といふ。翁「それさもいはれたり。」といひて、大臣おとゞに「かくなん申す。」といふ。大臣答へていはく、「この皮は唐土にもなかりけるを、辛うじて求め寻ね得たるなり。何なにの疑かあらん。さは申すとも、はや烧きて见给へ。」といへば、火の中にうちくべて烧かせ给ふに、めら\/と烧けぬ。「さればこそ异物の皮なりけり。」といふ。大臣これを见给ひて、御颜は草の叶の色して居给へり。かぐや姫は「あなうれし。」と喜びて居たり。かのよみ给へる歌のかへし、箱に入れてかへす。
なごりなくもゆと知りせばかは衣おもひの外におきて见ましを
とぞありける。されば归りいましにけり。世の人々、「安倍大臣は火鼠の裘をもていまして、かぐや姫にすみ给ふとな。こゝにやいます。」など问ふ。或人のいはく、「裘は火にくべて烧きたりしかば、めら\/と烧けにしかば、かぐや姫逢ひ给はず。」といひければ、これを闻きてぞ、とげなきものをばあへなしとはいひける。

6 龙の首の玉
大伴御行の大纳言は、我家にありとある人を召し集めての给はく、「龙たつの首に五色の光ある玉あンなり。それをとり奉りたらん人には、愿はんことをかなへん。」との给ふ。男をのこども仰の事を承りて申さく、「仰のことはいとも尊たふとし。たゞしこの玉容易たはやすくえとらじを、况や龙の首の玉はいかゞとらん。」と申しあへり。大纳言のたまふ、「君の使といはんものは、『命を舍てゝも己おのが君の仰事をばかなへん。』とこそ思ふべけれ。この国になき天竺唐土の物にもあらず、この国の海山より龙はおりのぼるものなり。いかに思ひてか汝等难きものと申すべき。」男ども申すやう、「さらばいかゞはせん。难きものなりとも、仰事に从ひてもとめにまからん。」と申す。大纳言见笑ひて、「汝等君の使と名を流しつ。君の仰事をばいかゞは背くべき。」との给ひて、龙の首の玉とりにとて出したて给ふ。この人々の道の粮・食物に、殿のうちの绢・绵・钱などあるかぎりとり出でそへて遣はす。この人々ども、归るまでいもひをして「我は居らん。この玉とり得では家に归りくな。」との给はせけり。「おの\/仰承りて罢りいでぬ。龙の首の玉とり得ずは归りくな。」との给へば、いづちも\/足のむきたらんかたへいなんとす。かゝるすき事をし给ふことゝそしりあへり。赐はせたる物はおの\/分けつゝとり、或あるは己が家にこもりゐ、或はおのがゆかまほしき所へいぬ。「亲・君と申すとも、かくつきなきことを仰せ给ふこと。」と、ことゆかぬものゆゑ、大纳言を谤りあひたり。「かぐや姫すゑんには、例のやうには见にくし。」との给ひて、丽しき屋をつくり给ひて、漆を涂り、莳绘をし、いろへしたまひて、屋の上には糸を染めていろ\/に葺かせて、内々のしつらひには、いふべくもあらぬ绫织物に绘を书きて、间ごとにはりたり。もとの妻どもは去りて、「かぐや姫を必ずあはん。」とまうけして、独明し暮したまふ。遣しゝ人は夜昼待ち给ふに、年越ゆるまで音もせず、心もとながりて、いと忍びて、たゞ舍人二人召继としてやつれ给ひて、难波の边ほとりにおはしまして、问ひ给ふことは、「大伴大纳言の人や、船に乘りて龙杀して、そが首の玉とれるとや闻く。」と问はするに、船人答へていはく、「怪しきことかな。」と笑ひて、「さるわざする船もなし。」と答ふるに、「をぢなきことする船人にもあるかな。え知らでかくいふ。」とおぼして、「我弓の力は、龙あらばふと射杀して首の玉はとりてん。迟く来るやつばらを待たじ。」との给ひて、船に乘りて、海ごとにありき给ふに、いと远くて、筑紫の方の海に漕ぎいで给ひぬ。いかゞしけん、はやき风吹きて、世界くらがりて、船を吹きもてありく。いづれの方とも知らず、船を海中にまかり入りぬべくふき廻して、浪は船にうちかけつゝまき入れ、神は落ちかゝるやうに闪きかゝるに、大纳言は惑ひて、「まだかゝるわびしきめハ见ず。いかならんとするぞ。」との给ふ。楫取答へてまをす、「こゝら船に乘りてまかりありくに、まだかくわびしきめを见ず。御み船海の底に入らずは神落ちかゝりぬべし。もしさいはひに神の助けあらば、南海にふかれおはしぬべし。うたてある主しうの御み许に仕へ奉まつりて、すゞろなる死しにをすべかンめるかな。」とて、楫取なく。大纳言これを闻きての给はく、「船に乘りては楫取の申すことをこそ高き山ともたのめ。などかくたのもしげなきことを申すぞ。」と、あをへどをつきての给ふ。楫取答へてまをす、「神ならねば何业をか仕つかうまつらん。风吹き浪はげしけれども、神さへいたゞきに落ちかゝるやうなるは、龙を杀さんと求め给ひさぶらへばかくあンなり。はやても龙の吹かするなり。はや神に祈り给へ。」といへば、「よきことなり。」とて、「楫取の御おん神闻しめせ。をぢなく心幼く龙を杀さんと思ひけり。今より後は毛一筋をだに动し奉らじ。」と、祝词よごとをはなちて、立居なく\/呼ばひ给ふこと、千度ちたびばかり申し给ふけにやあらん、やう\/神なりやみぬ。少しあかりて、风はなほはやく吹く。 楫取のいはく、「これは龙のしわざにこそありけれ。この吹く风はよき方の风なり。あしき方の风にはあらず。よき方に赴きて吹くなり。」といへども、大纳言は是を闻き入れ给はず。三四日みかよかありて吹き返しよせたり。滨を见れば、播磨の明石の滨なりけり。大纳言「南海の滨に吹き寄せられたるにやあらん。」と思ひて、息つき伏し给へり。船にある男ども国に告げたれば、国の司まうで访ふにも、えおきあがり给はで、船底にふし给へり。
松原に御み筵敷きておろし奉る。その时にぞ「南海にあらざりけり。」と思ひて、辛うじて起き上り给へるを见れば、风いとおもき人にて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、李を二つつけたるやうなり。これを见奉りてぞ、国の司もほゝゑみたる。国に仰せ给ひて、腰舆たごし作らせたまひて、によぶ\/になはれて家に入り给ひぬるを、いかで闻きけん、遣しゝ男ども参りて申すやう、「龙の首の玉をえとらざりしかばなん、殿へもえ参らざりし。『玉のとり难かりしことを知り给へればなん、勘当あらじ。』とて参りつる。」と申す。大纳言起き出でての给はく、「汝等よくもて来ずなりぬ。龙は鸣神の类にてこそありけれ。それが玉をとらんとて、そこらの人々の害せられなんとしけり。まして龙を捕へたらましかば、またこともなく我は害せられなまし。よく捕へずなりにけり。かぐや姫てふ大盗人のやつが、人を杀さんとするなりけり。家のあたりだに今は通らじ。男どもゝなありきそ。」とて、家に少し残りたりけるものどもは、龙の玉とらぬものどもにたびつ。これを闻きて、离れ给ひしもとのうへは、腹をきりて笑ひ给ふ。糸をふかせてつくりし屋は、鸢乌の巣に皆咋くひもていにけり。世界の人のいひけるは、「大伴の大纳言は、龙の玉やとりておはしたる。」「いなさもあらず。御眼おんまなこ二つに李のやうなる玉をぞ添へていましたる。」といひければ、「あなたへがた。」といひけるよりぞ、世にあはぬ事をば、あなたへがたとはいひ始めける。

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